お抹茶王子にキョーミないですっ!

「個人ではなく茶道部として袱紗(ふくさ)の予備などはないのかしら?」

「残念ながら予備の用意はございません」

「あら」

「申し訳ないです」

「部としてひとつくらい袱紗の予備があるといいですね」

「承知しました」


 というか本当に親子? この雰囲気じゃ間違えても「お母さん」なんて呼べないよね。まあ、あえてそうしてるのかもしれないけど。


 でも自分だったら、と思うと……お母さんと師弟関係? 敬語で話すの? うーん。やっぱりうまく想像できない。


「千菊さん。あなたが不甲斐ないと部の空気も緩みますよ。一年生も入部したのです。部長として、もっとしっかりとなさい」

「はい。肝に銘じます」


 美しく謝罪する龍崎先輩。そこには親に対する反発心なんかもちろんない。


 だけど本心も、ない……? そんな気がした。


 ただ『マサミ先生』を肯定する。機械のように美しく。そして『マサミ先生』が望むままに動き、答える。そこに感情はなく、あるのは貼り付けたみたいな微笑みだけ。


 なんだろう。この、体温のない感じ。

 まるで操り人形みたいだ。思った途端、なんだかぞくりとした。

 龍崎先輩って…………?