お抹茶王子にキョーミないですっ!

「わたし……」

 隣のその人を見上げる。桔梗色の夕空に染まるその瞳は、少し不安げで、だけどとても澄んでいた。

「ねえ、入部して?」
「え……」

「入部してほしい」
「先輩……」

「僕はスズちゃんと茶道をやりたい」

 う、先輩、もしやわたしが押しに弱いの知ってます?


「……わかりました。入部、します」


 ああ、また流されてる。

 途端に喜びが弾けたような笑顔になって、龍崎先輩は「ありがとう!」と勢いよくわたしの手を取った。


「ぎやぁっ!?」

 いっ、いきなり手なんか握ってくるからっ!


「茶道部、個性的な人が多いけど楽しいよ。夏には京都合宿もあるし、秋は文化祭で活躍できるしね」

「京都合宿……?」

「そう。二泊三日の京都旅。『合宿』なんて、いかにも青春って感じでしょう?」

「青春! いいですね!」

 頷き合って、その後も部活のことをいろいろと教えてもらって分かれ道で「また明日」と頭を下げた。