お抹茶王子にキョーミないですっ!

 すると親友は「うーん」と宙を眺める。短い前髪が良く似合う、くせ毛のショートヘア。日によって替わるヘアピンがどれもかわいいチャーミングな子。ちなみに今日は金色の八分音符。


「ま、そうだったけど、そうでもなくなった、というか」

「え。好きじゃなくなったの?」

 まあたしかにあんな強烈な親衛隊さんが付いてるわけだしねぇ?


「……って言うとそれもちがうんだけど。なんてぇのかな、『目の保養』って、わかる?」

「目の保養……」

「そう。見るだけで満足! たまに話して大満足! みたいな」

「付き合いたいってわけじゃないんだ?」

「あー、ないかな。少なくともあんまり想像できないよ。あの人の隣に自分がいるとか」

「あ……その気持ちは、わかる」

 近づくほどに格差を実感する、というか。


 するとマヨは「なに言ってんの」とこちらを向いた。

「スズは『向こう側』だよ」
「はぇ?」

 数秒止まって、いや、いや、いや、と後ずさった。

 まさか。わたしが『向こう側』? 有り得ない!


「だって『王子様』の幼なじみで、運命の再会を果たしたわけじゃん? その上向こうからのアプローチもしっかりある!」

「ま、待ってよ! わたしは先輩のことはぜんぜん──」


「『恋に堕ちる瞬間』っていうのはね、どこにでも転がってるものなんだよ」

 な、なにその格言!?


「ね。わたし、『主人公の親友役』もらえる?」


 うきうきと訊ねるマヨの言葉に目を見開いた。


「な、やめてよ」

 わたしが主人公!? そんなわけない!


「とにかく。行っておいで! んであとで全部聞かせてよね! んじゃ!」


 言うや春風より速く、新緑の外へとマヨは駆け出した。わたしをひとり下駄箱前にのこして。