お抹茶王子にキョーミないですっ!

「い、いや、あの」

「遠慮は無用です。あなたも『千さま』を推したいのでしょう? それなら私たちと行動を共にしてください。今朝のような単独行動は思わぬ誤解を産み、下手をすればあなたの身の危険にも通じます」


 透き通るような、澄んだ声だった。


「ただしその場合は茶道部は退部していただきます。それは私たちの『ルール』となっていますので。茶道部の人たちにも話は通しておきますのでご安心ください」

「いやっ……えと、わたしは、親衛隊には入らな…………」

 い、です、と言い終わる前に赤ぶち先輩があまりに恐ろしい顔をしていて固まった。


 あ、マズイ。これはマズイ。言い方を間違えた。


「あの……その、わたしは龍崎先輩のことは、好きとかそういうのじゃなく、て、です、ね」


 こ、こわいこわいこわい! 無言の圧、こわいっ!


「だから、その、ええと……」

 親衛隊さんの敵ではないことを説明したいのにっ!


「……たまにいるんですよね」

「へっ……」


「独り占め願望が強い人」


 ひええ!? な、なんでそんな解釈に!?


「ち、ちがいます! ほ、ほんとにキョーミなくてっ、だから」

「ではなぜ茶道部に?」

「それは……!」

 それは……なぜでしょう。


「あなたのような庶民が『千さま』に不用意に近づくことはこの学校では許されません。繰り返しますがこれはあなたの身を守るためでもあります」


 わかってる、わかってるってば。

 わかってるのに。


 なんかあまりに誤解が過ぎて目が潤んできた。だめだ、ここで泣いたらほんとうに『そうなんだ』と思われる。

 泣くな、泣くな、泣くなっ────。


「おや。なんの騒ぎかな?」


 このタイミングで登場するとか。

 『王子様』といわれる人は、いわれるだけの素質がやっぱあるんだなぁ、ともはや遠い目をしてしまった。


 にっこり素敵に微笑む、龍崎先輩がそこにいた。