お抹茶王子にキョーミないですっ!

「これ……」

 見ると先輩のものとよく似てる。


「おそろい。ふふん」
「ひぇっ!?」

「ご褒美というか、お礼かな。僕に『自由』を教えてくれたお礼」

 受け取って、ほわぁ、と眺める。

 先輩とおそろいの扇子。それだけで数億円を超える価値がある気すらする。ぬ、盗まれないように金庫に入れるべきか!?


「ほんとうはお礼にはキスをしたかったんだけどね。さつきさんが校内でなんて有り得ない、とうるさいから」

「は…………はい?」


 せ、せせせ、先輩!? え、え? っていうかさつき先輩とそんな話をしたの!?


「これからもよろしく、スズちゃん」


 すらりとその手がわたしの左手を取って、そして流れるように美しく屈み、その唇がわたしの薬指の根元に────付いた。


「……ひええええええっ!」


 なになに、なんで! キスはやめたって言ったよね!? 言ったのにっ!?


 いや、さすがにこんなのだめだ。こんなの、

 『王子様』すぎる……。


 はー、そうかぁ、これが『王子様』なんだねぇ。

 ってもはやどこか遠くから見てるみたいな。


「あはは。倒れないでね?」


 ハッとして自分の身体に帰還した。
 自分でもよくこらえたと思いますっ!
 まったく恐ろしい人だ……。



 そんなわけで。
 わたし、西尾 スズは。

「へ!? 辞める!?」

「うん。龍崎先輩もいなくなっちゃったしね。バレー部に専念することにしよっかなって」

 もぉう! せっかく気持ちを固めて宣言するところだったのに!