お抹茶王子にキョーミないですっ!

 手を引かれるまま廊下を進むと「ひゃあ」とあちこちから悲鳴が上がる。

 ううう! 先輩は慣れているのかもしれないけど、こっちは生きた心地がしませんよ!?


「あ、あのあのあのっ! 先輩、あの、手、手を、離してくれませんか!?」


 たまらず抗議してみると案の定「どうして?」と。もう。


「め……目立ちすぎますから」

 暑いのは浴衣のせいじゃない。地球温暖化のせいでもない!


 すると先輩は「ふ」と笑って今度は指を絡めるようにして手を繋いできた……ってなんで! ホワイ!?

 これじゃますます周りに注目されちゃうよっ! ただでさえ浴衣で目立ってるのに!


「り、龍崎先輩……」

 ようやく足を止めたそこは人気(ひとけ)のない体育倉庫の近くだった。

 通路の隅に生えた濃いピンクのコスモスがそよ風に揺れる。


「その呼び方」

「へ」

 いきなりなんの話かと思ったら。


「まあ今さら『お菊ちゃん』っていうのもちがうもんね。ならせめて『千菊』にしよう?」

「へっ……えっ……」


 戸惑わずにいられましょうか!