お抹茶王子にキョーミないですっ!

「ご準備はよろしくて? みなさん」

「えっ、マサミ先生!?」


 思わず声を上げたのはマヨだった。

 今日もしゃんと決まった和服姿の先生にチラと睨まれて慌てて縮む。


 するとマサミ先生はその視線をマヨから隣のわたしへと移し、するすると歩み寄ってきた。


 ドキン……!


 こうして対面するのは、京都合宿のあの時以来だ。


「西尾さん」

「はっ、はいっ」

「一年生だからと萎縮することはないです。失敗しても結構。今日はあなたの晴れ舞台だと思って、あなたの茶の湯をめいっぱい(たの)しみなさい」


 思わず、キョトンとしてしまった。

 先生が微笑んでわたしの肩に触れるから、慌てて「ハイっ!」と返事をした。


 この人の目に、わたしはどう写ってるんだろう。身を削って大切に育ててきた息子さんに大きな影響を及ぼしたわたしは……。


「西尾さん」

「は、はい……!」

「あなたはこの中学の茶道部員です」

「え……」

「引け目に思うことはなにもないわ。堂々となさい」


 そうか、そうなんだ。

 先生は『お母さん』の目でわたしを見てなんかないんだ。


 『茶道の先生』として『生徒のわたし』をちゃんと見てくれてるんだ。


 だったら、応えなくちゃ。


 お礼を言って、お腹に締めた真っ赤な帯の前で硬く拳を結んだ。


「はじめの挨拶をします!」

 気づけば龍崎先輩がみんなの前に立っていた。

 いつかの部活紹介の時とはまたちがう色の、素敵な和服姿で。


 さあ。いよいよ本番だ。