お抹茶王子にキョーミないですっ!

「僕が母に申し出たのもあるけど、さつきさんからも許嫁を降りたい、と言われていたんだ。僕がスズちゃんに告白していたところに居合わせたからね。無理もない」

「い、いいんですか」
「いいんだ」


 濃い夏空のもと、先輩は爽やかに微笑んでいた。


「彼女も呪縛に悩まされていた。だから、これでいいんだよ」


 そうして立ち止まると、すらりと美しい所作で先輩はわたしのほうを向く。

 ふわん、と熱のある夏風が通り抜けた。ツクツクボウシの声が際立ち、やんだ。



「まだスズちゃんの気持ちを聞かせてもらっていなかったね?」



 先輩はまっすぐな瞳でわたしを見ていた。


「改めて言わせてもらうけど。スズちゃん。もし迷惑でなければ──」
「メイワクなんかじゃないですっ!」


 言葉が飛び出すように口から出たのは、ずっと言いたいと思ってたことだから。


 頬が熱くなるのに耐えながら、なんとか言葉を探して、つむぎ出す。


「全然、メイワクなんかじゃなくて。わ、わたしっ、龍崎先輩に……お菊ちゃんに『好き』って言ってもらえて、すごく、すごく、嬉しかった……んですっ」


 ツクツクボウシが、また鳴き始めた。