好きです、先輩。別れてください

「でも……」


「いいからさ、行こ?」




そう言って私の肩に腕を回そうとしてきた先輩。


……やだ!


ぎゅっと目をつぶって避けようとした、そのとき




「さく───」


「やめなって。嫌がってるよ、その子」




聞こえてきたひとつ目の声──猫葉くんの方はたぶん、私の聞き間違え。


でもふたつ目は絶対に聞き間違えなんかじゃない。


聞き間違えるわけがない。




「ふ、うま先輩……」


「……大丈夫?」




私が名前を呼んだ途端に、ぎゅっと顔を歪めた泣きそうな表情に見えた。


先輩の生の声を聞いたのは、1ヶ月ぶりだった。


そういえば、先輩はテストのとき学校これたのかな……




「星谷!俺がしゃべってたんだけど」


「後輩を困らせてるようにしか見えなかったけど」


「チッ」




舌打ちして去っていったチャラチャラ先輩。



準備中の周りの騒がしい音は、一切私の耳には入ってこない。


それだけ、目の前の先輩でいっぱい。




「せ、先輩もクラス委員だったんですか?」


「違うよ。久しぶりに学校きたら、友だちに代わり頼まれたんだ」


「……忙しいのに大丈夫なんですか?」


「あんまこないんだから行事に貢献しろとかなんとか言ってたかな」




無難な会話。2人とも、あの件には触れようとしないから。