「はんちゃん、こんな寒いのに俺のこと待っててくれたの?」
「当たり前です!直接ちゃんと映画の感想伝えたかったですし………少しでも長く、一緒にいたいから」
「っ、そっか。俺もはんちゃんと一緒にいたい。会えなかったぶんも」
先行上映会が終わってからの待ち合わせ。寒い中でも、先輩を待つのは全く苦にならなかった。
先輩の隣を歩けるのは、この上ない贅沢だと思う。
自分の大切な人が、自分の隣にいてくれる。
これ以上幸せなことって他にある?
「あっ。映画、すっごくおもしろかったし感動しました!泣いちゃうくらい」
「よかった〜。映画の主演は初めてだから、実はけっこう緊張してたんだよね」
「全然そんな風には見えませんでしたけど……」
「これでも俳優だからさ」
そう言って先輩は笑う。
ふわっとじゃないけど、確かに先輩の素の笑顔。太陽みたいな。
「今までいろんな役を演じてきて、いろんな感情に触れてきたと思ってたけどさ───」
「…先輩?」
「俺をこんなに変えるのは、絆菜だけだよ」
外だから触れてくることはしないけど、それをしなくても伝わってくる何かが、先輩の言葉にはあった。
「俺の隣にいてくれて、ありがとう」
「っ!それはこっちのセリフです!」
辺りは暗くて、空には星が光ってる。
なんてことない道端も、その景色も、先輩が隣にいてくれるだけで輝いて見えるの。
先輩。先輩のことを変えるのが私なら、私を変えるのはもちろん、楓茉先輩ひとりだけだよ───


