気づけば、吐く息が白く染まる季節。
今日は、楓茉くんの主演映画である『君と未来をもう一度』の先行上映会に訪れていた。
───隣には、誰もいないけど。
「チケット拝見しま〜す」
「あっ、はい。お願いします」
「お席は、Mの18になります」
スタンプが押されて、チケットが返される。
楓茉先輩にもらったチケットをしっかりと財布にしまい込んで、席に向けて歩き出す。
深い赤の座席に辿り着き、着ていたコートを脱いで、座る。
上映開始まで、あと少し。周りの席の人たちも、そわそわしてる。
ほどなくして劇場内が暗くなり、暗い画面に薄いピンク色───桜の色の文字が浮かび上がる。
『君と未来をもう一度』
予告でも流れていたセリフが、ここでも流れた。
『君と別れてから、俺の世界は色を無くした』
『貴方と別れてから、私の心は空っぽになった』
少し悲しげなゆったりとしたローテンポのピアノの曲が、劇場内を満たす。
私の目に映っているのはもう、俳優 星谷楓茉じゃなく、演じている役としての1人の人間だ。
『あのときのこと、ずっと後悔してた』
『いないとしんどいんだよ。そばにいてくれよ』


