ここじゃなんだから───そう言った楓茉先輩は、私を屋上に誘った。
私たちの間には、文化祭には似合わない沈黙が降りている。
でも、気まずいのとは違う。
前を歩く先輩をぼーっと見つめる私の心の中にあるのはドキドキと、不思議と少しの安心感。不安もあるけどね。
「……楓茉先輩、文化祭来れたんですね」
「うん。無理言って少しだけ休みをもらったんだよ」
「お仕事、忙しいですもんね……」
「そうだね。でも、やりがいあるし、なにより楽しいからさ」
屋上の扉を少し開けたところで、先輩は振り返ってふわりと笑う。見ている人を幸せにする、私の大好きな笑顔で。
扉から差し込む光を纏った先輩は、さながら映画のワンシーンみたいで……。
無意識にも見惚れちゃう。
「はんちゃん。……俺ずっとね、はんちゃんと話したかったんだよ」
「私も、です」
どちらからともなく、屋上のフェンスの近くまで歩く。
よく晴れた空は、私たちを見守って、明るく照らしてくれてるみたいだった。
日光を反射して、きらきら光る家々を視界の端に捉えて、また楓茉先輩に戻す。
そして、告げる。


