「"執事・メイド"なんだからセットの方がいいでしょ」
「そ、それもそうだけど……」
「ほら、行くよ」
それでも少し渋っている私を見て、猫葉くんは眉を顰めていたその顔は直後───にやっと、不敵な笑みに姿を変えた。
直感で、これは危ないときの猫葉くんだって気づくけど、もう遅い。
「それともこうして欲しかった?俺は今、"執事"なわけだし」
「ちょっ、えっ……」
「俺と一緒に来ていただけますか、お嬢様?」
私の目の前で跪いた猫葉くんに下から見上げられて、右手をそっと取られる。
メイド服の私はお嬢様じゃないし、執事ってそんなことしないよ、なんてツッコミはもちろん浮かばない。
周りの喧騒も女子の悲鳴も聞こえない。
そんなこと考えて気にしてる余裕、ない。
「ね、猫葉く───」
「ふっ。あーあ、俺の時間はここまでかな」
「…え?」
息を吐くような笑いをひとつ。
私の手を離して、猫葉くんは立ち上がった。
咄嗟に言葉を理解できずにフリーズする私からプラカードを取り去って、猫葉くんは背を向ける。
「そろそろ当番交代でしょ。あとは俺やっとくから」
「えっ、なんで──」
「後ろだよ。……がんばってね、桜庭さん」
「猫葉くん?後ろって……」
ひらひらっと手を振って猫葉くんは離れてく。
状況を理解できていない私を置いて。
「一応あいつに助けられたってことか。……ね、はんちゃん?」
「楓茉、先輩……」
振り向くと、私の好きな人──楓茉先輩が、後ろに立っていた。


