僕は君と馴れ合い

幕が上がった。

音楽が流れ、
次第に拍手が聞こえてくる。

「行くよ」

梓凪(アズナ)の声に僕は黙ってうなずくだけ。

よし、行こう。

「はい、どうも~!!!」
「どうもー!」
「私たちはお笑い同好会で漫才やらせてもろてます」
「“ナレアイ”と申します。よろしくお願いします~」

この舞台で、僕にはやっぱり、漫才には似つかわしくないざわめきを聞いた。見た。
確かに感じた。
ネタはウケた。
すべったんじゃない。
それは、間違いない。

理由はきっと1つ。
それは———


「・・・い!?れーいー!?」
「ん?」
「ちょ、ちゃんと話聞いて?」
「ごめん。ちょっとぼーっと」

彼女は風間梓凪(カザマ アズナ)。僕と同じ高校2年生。僕と『ナレアイ』というコンビを組んで漫才をしている。ちなみに幼馴染だ。

「どーせ、また小説のモノローグみたいなセリフを頭ん中でしゃべってたんでしょ」
「いやそんなことは・・・!」

「しっかりしてくれよ斎藤くん。君たちの漫才は面白かったけど。文化祭の反省会は大事だよ?」
「すみません部長」

この人は、この高校のお笑い同好会の会長、3年生のトウドウ先輩だ。
正式な部活動ではないからあくまでも“同好会”だが、
トウドウ先輩は部活だと言い張っているため“部長”と呼ばされている。
いかにもネタを書く方の芸人のように丸眼鏡をかけた細身だ。

「確かに、会長の仰る通り、少し焦ってしまって練習通りに間が取れなかったことは自覚しています。」

梓凪は相変わらず漫才には真面目だ。

僕はそんな梓凪の幼馴染。
斎藤伶(サイトウ レイ)。
この話の主人公だ。
と言いたいところだが、僕のこの16年間において梓凪の方が主人公にふさわしいと言えるほど常に彼女が横にいる。

梓凪は物心ついてすぐに、僕の住むマンションの隣の部屋に越してきた。
つまり幼稚園からずっと同じ。
同じように近いからという理由で地元の高校に入学し、同じ同好会に入った。

というのも、僕らには幼い頃に約束した共通の夢があるからだ。
それは、

“芸人になって僕たち2人で全人類を笑わせて世界を平和にする!”

という夢。

しかし、それにはどうしても拭えない、ある問題があるのだった…。


「そうですよね…。ありがとうございます部長。次までにはネタを修正しておきます。」
「あくまでも僕の意見だから、最終的には君たちで話し合って決めてね。」
「はい!」

梓凪とトウドウ先輩は真剣に話し合っている。
でも、そこじゃない。
絶対に、ネタの問題ではない。

トウドウ先輩だって熱く語ってはいるが、本番は自分の出番の緊張で僕らの漫才なんてほとんど見れてなかったじゃん!

僕たちにとって何よりも大問題なのは―

「綺麗すぎるんだよ!」

ぼくはつい口にしてしまった。

「は?どしたの伶?」

梓凪はあきれている。

「斎藤君、君はさっきから集中しているのかね?!」
「あ、いや、すみません部長。失礼しました。何でもありません…。」

そう、綺麗すぎるんだ。
彼女は美人。
それは芸人において、あまり有利には働かない。

客席のウケが半減していた原因は明らかに、彼女の美しさ故である。
実際、文化祭でも漫才を始めてすぐに、

高校生A「え、あれだれ?めっちゃ可愛いじゃん!」
高校生B「確か、2年生だよね?」
高校生C「俺、絶対あの子に投票しよ。ミスコン」
高校生A「でも、今年のミスコンにあんな子エントリーしてないよ」
高校見学に来た中学生D「美人だ…。絶対ここ受けよ。」

そんな声が飛び交っていた。

ネタの後半こそ、漫才を笑う人も増えてはくれたが…。

淡々とトウドウ先輩は反省会を進行していく。
「では、次にサカタさん。えー今回もさすが圧巻の落語でした。」
「そりゃ、まぁ、ぼくだって伊達に稽古積んでないからね」

サカタさんは高校4年生。そう、1年留年している。
さすがの貫禄があり、本物の落語家に見える。
着物越しに見えるふっくらしたお腹も、まさにそれだ。

僕らのいるお笑い同好会はもともと落語研究会、通称“おちけん”だった。
しかし、会長だったサカタさんが留年したこと、会員のほとんどが漫才やコントがしたかったことから進級したトウドウ先輩が会長になりお笑い同好会に変わったのだ。
おそらく今でも、サカタさんはそれを密かに根に持っている。

「ただ、やっぱり、ちょっと話が難しすぎるようで、何人かのお客さんが寝てしまっていました—」
「会長さんにはそう見えたかも知れんが、大半は目を閉じて聞き入っていたんだ。いびきをかいていた客は、彼のセンスがなかっただけだな」

いや、半分以上が寝ていた。
いびきをかいていてのだって、落語オタクで有名な教頭だぞ。

「まぁ、そうですね…。あ、では次にサツキちゃん。…は、多分、だいぶ、きっと、かなり良かったと思う!」

どっちだよ。

「はい。自分でも。会場を涼しくできた。と。思います。私の。浴衣姿の妖艶さに。何人か、惑わされてましたが…。」

彼女はサツキ。
今年、唯一入会してくれた1年生。
真っ黒のロングヘアーでかなり華奢で背も高い。黒縁の眼鏡が良く似合う。
なぜか演目は怪談。
彼女の入会先がここで合っているのかわからないが、確かにうちの高校にはオカルト研究会やそれっぽいものもない。
トウドウ先輩も、専門じゃないからか匙を投げている。
そして、なぜか艶っぽく在ろうとしていて、普段から怪談のように会話をする。

「あ。うん。そうかも、ね。うん。よかったよかった。じゃあ、次は—」

少し困っているトウドウ先輩はを見て、サツキは高校生らしからぬ大人っぽい笑い方をしている。
中二病の中学生男子が見たらイチコロだろう。

「先輩、僕らはまぁまぁ良かったんじゃないっすか?」

彼は、僕らと同じ学年の2年イリヤマ。
イリヤマはトウドウ先輩と『入道雲』というコンビを組んでいる。
今回の文化祭ではコントを披露していた。
入会当時から、
「えー、モテたいっす!よろしくお願いしまーす!」
と自己紹介していたくらいチャラ男キャラだ。
梓凪曰く、モテるために芸人を目指す人は、実際の芸人養成所にも結構いるらしい。

「まぁ、そうだな。少し僕が噛んでしまったが…。部長として面目ない。」
「ほんとっすよ~!頼みますよ先輩~!」

しかし、僕は知っている。
イリヤマくんはこんなキャラを見せているが、裏では誰よりもセリフを完璧に覚え、何度も練習をしているのを僕は知っている。
髪の毛も染めてはいるが、校則にかからない程度のこげ茶色。
ピアスをつけているように見えるが、おそらくイヤリングだ。それも同好会のときだけ。
実に真面目だ。

我ながら、個性の強い同好会に入っていると常々感じる。

「お笑い同好会のみなさん!突然失礼します!何ですか!あの発表は!」

彼女は風紀委員の1年生ミク。ショートヘアが良く似合っている。
部活動やその他の同好会や研究会を取り締まっているようだ。

僕らがいるこの高校は星ヶ夜(ホシガヤ)第3高校。
偏差値は可もなく不可もなく。
部活動成績も、まぁ可もなく不可もなく。
ごく普通にゆるーく過ごせる高校。
でも、唯一うちの高校でひときわ存在感をなしているのが風紀委員だ。

「あんな発表、風紀委員として見逃すわけにはいきません!」
「っふ!風紀委員!」
「なんですか、その呼び方!」
「いやー、ネタに関しては事前にしっかり確認したじゃないですか」

トウドウ先輩も風紀委員とは事あるたびに交渉を重ねている。

「事前に確認した内容とは大きく異なっていた箇所がいくつもありました。」
「いや、それはアドリブと言って、お客さんの反応をみて—」
「しかし、急に変更されては、取り締まりも不可になってしまいます!」
「それは—」

この2人のやり取りも完全に再放送だ。

「とにかく!風紀を乱したとして、お笑い同好会は3日間の活動停止を命じます!」
「そんなぁ…。」

トウドウ先輩はうなだれているが、正直僕にとっては同好会が停止してようが、梓凪とのネタ合わせに影響はない。
梓凪とのネタ合わせは、毎日の登下校に行われる。
もちろん今日の帰り道も。

「そう、でね。ここの間(ま)を焦っちゃうんだよね。ここの間で面白さも結構左右されると思うの」
「そうだね。ぼくたち2人で合わせる機会を増やさないと、なかなか癖は治らないかもね」

このように、毎日のように帰り道は梓凪と家の玄関先まで話し合っている。

「うん!頑張ろうね!私たちなら、次は会場を爆笑の渦に包める!よっしゃ!帰ったられんしゅうだぁ!」
「あ、梓凪。それもいいけど、そろそろ試験が控えてて…」

梓凪の顔は一瞬青ざめた。
彼女は専ら勉強が苦手だ。

「それ、今言うかね…。まぁ、私には秀才な相方の伶くんがいますから!何とかなるっしょ!」
「え、また僕が教えるの?」
「へへ」
「ちょっと、今回は僕も苦手な範囲だから」
「よっ!頼れる我が相方!」

「ねぇーちゃーん!」

全速力で走ってぶつかってきたのは梓凪の弟、カナタくん。中学3年生だ。
梓凪に似て、とてもイケメン。
女子にモテそうな髪型に、身長もそろそろ抜かされそうだ。

「いったぁ!ちょっとカナタ!急にぶつかってくんなよー!」
「へへ。なーんか相変わらず仲良くイチャついてたから、間に入りたくなっちゃって~」

このやんちゃっぷりも姉弟そっくりだ。

「今日も元気だね。カナタくんは」

ぼくは彼のエネルギーに圧巻され、会うたびにこのセリフを言っている気がする。

「何をおっしゃる伶パイセン。パイセンも十分生き生きとして見えましたよ。」
「そうかな」

「どうせ今日も漫才の話だろー?本当に名コンビですな。お2人は」
「そうですけどなにかー?私たちは正真正銘の名コンビでっせ!」

この口達者なところもカナタくんは大きくなるにつれてどんどん梓凪に似てきている。

あ、でも、似てないのは学力。
カナタくんはこの辺りで一番偏差値の高い高校を目指し受験勉強している。
頑張り屋で明るくて本当にいい子だ。

梓凪が越してきて1年後にカナタくんは生まれた。
一人っ子で幼かった僕にとって、赤ちゃんだった頃のカナタくんの存在は強く印象に残っている。

「じゃ、伶、そういうことで。」
「うん。」
「今日はお疲れ様」

この別れ際の“お疲れ様”という言葉で思い出す。
やっぱり梓凪って綺麗なんだよな…。

「お疲れちゃーん」

すかさずカナタくんも挨拶をしてくれるが、どこで覚えてくる言葉なのか、いささか心配になる。

今日も僕たちは、玄関先で別れた。
マンションの隣同士なので、部屋に入りドアを閉めるまで僕たちは顔を合わせている。
これも幼い頃から全く変わっていない。

ここ最近僕は、家に帰れば悩むことが趣味になっている。
梓凪は美人だが、その自覚はないようだ。
というか、全く自分の容姿に自信を持っていない。
僕にとってはかなりの悩みどころだ。

そしてまた新たな悩みも顔をのぞかせ始めている。

このまま梓凪とコンビを組み続け、漫才に突き合わせていていいのか?ということだ。

もともとは、僕がテレビに映る芸人を見て憧れたのがきっかけだった。
行動力のない僕を、梓凪が引っ張ってくれて、コンビとして漫才を始めた。

だが、このごろ親戚や友達にもよく言われているのを聞く。

「芸人なんてもったいないよ。梓凪ちゃんは美人さんなんだから、もっとかわいらしいお仕事を目指したら?」

僕が彼女の将来の枷になっているのではだろうか。
2人で決めた将来の夢も、僕に寄り添ってくれいるだけじゃないのか。

ぎゅるぎゅるぎゅる~

「痛っ!」

僕はお腹がとても弱い。
梓凪、いや、僕自身の将来を考えると、不覚にもお腹が痛くなる。
もういい。1回寝よう。


次の週明け、この日の登校中も相変わらず梓凪は漫才の話をしていた。

「それでさ、この『トマトジュース』って芸人さん!まだそんなにメディアには出てないんだけど、結構面白くてさ。伶は?最近見つけた芸人さんとかいる?」
「うーん。そうだなー…」

そんな余裕はなかった。
悩んでは寝込み。
起きては悩み。
ご飯を食べては、腹痛。
一体僕はどうしたんだ…。

「後で伶のAINEに『トマトジュース』のチャンネル送っとくね。絶対面白いから見てね」
「うん。わかった。」

「はぁー。今日は苦手な教科ばっかりだなー。」
勉強が苦手な梓凪には、“苦手な教科”とはほとんどすべての教科を指している。

教室に入ると黒板に大きく何かが書かれていた。

「あ、でも4限目が体育になったらしいよ」

ぼくは梓凪にとっての朗報を伝えた。

「え、うれしい…。泣いて良い?」
「良いよ」
「いや、女子が泣きそうなんだからとめてー?」
「あ、そっか」
「もー!…あ、先にトイレいっとこ~」

そういって梓凪は鞄を机に投げ教室を出た。

「マジで何なの調子乗りすぎ」
「ほんっと。人の晴れ舞台をめちゃくちゃにしといて」

厚化粧で髪の毛もくるっくるに巻いた女子三人がこちらを見ながら聞こえるように話していた。
彼女たちが話している内容は僕にはだいたいわかっていた。

「どしたの?何かあるなら、僕に言いなよ。」
「いや、別に。」

彼女はカナだ。
こちらから話しかけたらすぐに静かになる。

「伶くんさ、漫才なんてやってて楽しいの?ちょっとダサくない?」

これは3人組の真ん中にいるアイカ。
その右には無口なサヤがいる。

「楽しいよ。僕にはもったいない相方もいるし。」

僕は笑顔で答えてやった。

「あっそ」

アイカはそういって2人を連れて自席に戻っていった。
彼女たちは文化祭でミスコンにエントリーしていた。
しかし、ミスコンの前座として僕たちお笑い同好会が演目を披露したため、梓凪が先に登場したことで、予定よりも大幅に投票数が減ったとのこと。梓凪をエントリーさせろとの声もでたそうだ。
おそらく彼女たちはそのことに憤慨していたのだろう。

だが、そんなことは梓凪には関係ない。
全力で僕と漫才をしただけだ。

それより、あのカナが着ていた制服のベスト。
あれはきっと裏返しだ。ラベルと縫い目が出ていた。
4限の体育まで気が付かないに賭けよう。
もし勝ったら、今日はバーゲンダッツを買って帰ろう。


その日の帰り道。
僕は梓凪とコンビニに寄って、カリカリくんを買って帰った。

「なんっで、着替えるときに気付かない!」
「おぅ、なに、伶どした?!」

結局、カナは裏返しのまま3人でカラオケに向かっていった。

「あ、そうそう。今朝話した『トマトジュース』の新作ネタがアップされたの!ちょっと一緒に見よ」
「うん」

梓凪はすっかり『トマトジュース』に夢中らしい。

「えっと、イヤホンは…」

イヤホンを探す梓凪を横目に思う。
こうしていつも2人で帰っているが、すれ違う人にはカップルにでも見えるだろうか。
そんなわけないか。
梓凪みたいな美人と僕がカップルにはさすがに見えない。

あ、いや別に、カップルみたいに見られたいわけじゃないけど。

「学校に忘れた!」
「教室?」
「うん!イヤホン入れたポーチごと…。ちょっとダッシュして取って来るわ。すぐ戻るから待ってて!」
「あ、わかっ—」

やっぱり梓凪は足が速い。
彼女が学校に走って行った後を回転草が追いかけて行った。

「いや、西部劇か!」

つい素でつっこんでしまった。

「あれー?今日はお1人様~?」

カナタくんがニヤニヤしながら声をかけてきた。

「いや、梓凪とさっきまで一緒だったんだけど今ちょうど、忘れ物を取りに戻ってる」
「そういうことね。あまりにも寂しそうだったから、ネタの方向性で喧嘩でもしたかと」
「それはないよ」
「えー?喧嘩くらいするでしょ?」

喧嘩。
そういえばネタについて喧嘩したことは無いかも知れない。

「え、喧嘩したことないの?」
「ないかも」
「まじか…。そこまでベタ惚れだったとは…」
「…え?」

惚れている?
だれが?
だれを?

「伶くんさ、姉ちゃんのこと好きでしょ。」
「…は?」

言葉が出てこない。

「もう、打ち明けても良い頃じゃない?高校2年生だよ?」

中学3年生に言われているぞ僕!
何か言わなければ!

「伶くん、男女の幼馴染と言えば、なんだかんだ言って好きになっちゃうのがサガだよ?」

いや、僕たちはそんなあるあるの展開になるわけ—

突然、なんだか胸が締め付けられた。
同時に今までの梓凪の記憶が走馬灯のように駆け巡る。

いやいやいやいや、そんなわけない。
ただ、梓凪は可愛いだけ。美人なだけだ。

彼女のことは僕がよくわかってる。
僕が彼女に恋したことなんて…。

僕は、僕のことをわかってる…?

自分がわからない。

頭に血がたまってるような、熱が出てきたような—

あ、これはダメかもしれない…

「なんてね~!そうなったらおもしろいかな~って」

僕は…

「おまたせー!机の奥にあったー!新ネタ見よー!って、カナタ居たの?」
「今ちょうど伶くんと会ったとこ」
「あ、そうだったの。ちょっと、これから至急で伶と動画見るから静かにしててよね」
「え、俺も見たーい」
「むりむり、イヤホンだから2人までしか聞けないもん。」
「俺だけ仲間外れかよー」
「5分だけだからちょっと我慢しなさい。あとで見せてあげるから」
「ちぇー」

かすかに聞こえる2人の会話…。
え?梓凪とイヤホン…?
そういえば、これだけ一緒にいたのにイヤホンを分けるなんて初めてだ。

いや、それくらいの近距離なら今までも何度もあった

なんの問題もない。

のーぷれぶろむだ。
あ、違うか。

のーぷろぶれむ…。

何を言ってるんだぼくは。

あ、まずいかもしれない。

なんだか身体が…。


梓凪「はい、伶。左耳—」

ドサッ!

梓凪「え?!伶?!どうしたの?!大丈夫?!」
カナタ「伶くん?!」

たぶん、ぼくは倒れた。
遠のく意識の中で、ぼくを見つめる梓凪の顔を眺めた。

綺麗。
でも、今までとは何かが違う。
ぼくにだけ、梓凪が綺麗に見えている。
そんな気がした。
特別な感覚。

これは、始まってしまったのか。
ぼくは、彼女に恋心を…。

ぼくの瞼はもうすぐ閉じそうだが、
ぼくの恋が幕を開けようとしているのを確かに感じた…。

何言うてんねん!
こんなこってこてのツッコミを脳内でするなんて—。

「ぁにぃうてんぇん…。」

「え?!なんて?!伶?!れい?!」