そして3月の中旬…
幸成は頭を丸刈りにしてマンションに帰ってきた。
「えっ、初めてみたかも…」
「初めてだよ!あ〜やだ」
「ちょっと写真、写真(笑)」
「あ〜これも嫌だったんだよな」
「幸成は修行が終わってもこのスタイルで行くの?」
「いや、普通に戻すよ」
「でもBARの名前も『BOU』にしたでしょ?坊さんから取ったよね?」
「そうだけど漢字にするか迷ったんだよな」
幸成がオープンしたBARの名前は『BOU(ボウ)』に決まった。
オーナーが幸成で店長が聖司、怜士は今はまだ県外にいるが彼女を説得して戻ってきたいと返事はしたらしい。
後は大学生の住み込みバイトを1名雇っている。
「私もたまには店には顔出してみるね」
「頼んだ、花凜の事もな、しんどかったらお互いの両親に助けを頼むこと!無理はしないこと!」
「育休が充実してるから大丈夫だと思うわ」
「そうだな…梨花子…」
幸成は愛情たっぷりのキスをくれた。
「あ〜抱きてぇよ」
「いいよ」
「え?」
「でも花凜が寝てるから静かになら(笑)」
「いいのか?」
「優しくしてね」
「わかった…」
幸成はゆっくり梨花子の肌に触れていく。
「胸は触らないで、母乳が出ちゃう」
「うん」
優しく梨花子を抱いていくと「ふぇっ」と花凜の鳴き声がして2人は固まった。
「大丈夫そ?」
ベビーベッドを見てみるとすぐに眠ったようだ。
「ふふっ、びっくりしたね」
「あぁ」
梨花子をひょいと抱き再び抱き始め、朝まで眠ったのだった。
花凜は最近はひどい夜泣きはせず朝方まで眠ってくれるタイプだ。
朝、花凜に母乳を与えていると幸成は目を覚ました。
シャワーを浴びに行き、着替えると花凜を抱き上げてゲップをさせてくれた。
「花凜、パパ頑張ってくるな、いい子でいるんだぞ」
幸成はスマホ2台の電源を切り梨花子に預けた。
メモには梨花子と白木と聖司の電話番号を書いてカバンに入れる。
花凜と梨花子にキスをして、幸成は大きめのボストンバッグを持ち、タクシーで空港に向かった。
夏のお休みも幸成は帰って来なかった。
何かに集中する幸成の性格だ。
多分帰らないと梨花子は予想していたのだ。
梨花子は帰ってきてから幸成に見せる為に自分と花凜の写真をたくさん撮った。
ハイハイの瞬間や歩こうとおしりを上げようと頑張っている姿、つかまり立ちなど…
時には母親に花凜を預け、BOUの様子を見に行き、写真に収めた。
「梨花子、寂しくない?」
10月にBOUを訪ねると恵那ちゃんが聞いてきた。
「そうね、花凜に精一杯で幸成の事を考える事は今はないけど…花凜の初めての熱の時は一緒にいて欲しかったかな」



