会えないままな軍神夫からの殺人的な溺愛

「そのような、弱腰で……俺も軍人キーブルグ侯爵家の者ですよ。姉上。それなりの訓練も受けている。美しい女性を殺すのは、忍びないが、苛々するような口を聞く女は嫌いなので……」

 その時、私が持っていた剣を倒れていたアーロンが素早く動いて取り、私に向かってきたヒルデガードの腹を刺した。

「痛い……! 痛い! 酷いじゃないか。兄上!!」

 道にみっともなくのたうち回る弟の姿を見ながら、アーロンは私の前で座り込んだ。

「……うるさい」

 ……この、決定的な瞬間を迎え撃つために、何を言われても、じっと黙っていたんだ。

「……アーロン。大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ。よくやった。ブランシュ。君は立派なキーブルグ侯爵家の人間だ。俺が認めたんだから、誰にも文句は言わせない」

「……兄上! あにうえ!! 助けてくれ!!」

 刺されてもアーロンは痛がらずにじっと耐えて反撃する機会を窺っていたけれど、ヒルデガードは痛みに弱いのか見苦しくのたうち回り、ひどい有り様だった。

「父が勘当したあの時から、お前は弟でもなんでもない……ああ。やばいな……目が、見えなくなって来た」