会えないままな軍神夫からの殺人的な溺愛

 さっきまで周囲にはあんなに人が居たのに、真っ昼間の惨劇に恐れをなしたのか人っ子一人居ない。

 助けを求める前に、アーロンの命を狙うヒルデガードから、とにかく彼を守らなければならない。

 ……アーロンさえ、生きて居れば。私は一年間、ずっとそう思って居た。

 私の願い通りに、彼は生きて居てくれた。私を国ごと守ってくれた。

 そして、今度は私が夫を守るのだ。

 私は近くに居るアーロンが腰に佩いていた剣へと手を掛けた。

「……ブランシュ? 待て……! 慣れない君が持つと、怪我をしてしまう。危険だ」

 長剣はすらりと鞘から抜けた。思ったよりも、それは重い。アーロンの心配はもっともだ。

 私はこれまで、こんな武器を持ったこともないのだから。

 けれど、私は震える両手で、それを持ち構えた。その時ヒルデガードの顔からは侮りが消え、真剣に見えた。そうすると、彼は少し兄のアーロンに似ているかもしれない。

 やはり、血を分けた兄弟なのね……アーロンは常にこの弟を殺さなければと言っていたけれど、その理由が、今では私にもわかる。