【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「行こうか」

「はい」


 いつものように、メリルが僕の腕を取る。泣き出しそうになるのを必死でこらえながら、僕は夜会会場へと向かった。


 会場はお祝いムードに包まれており、たくさんの人々がリーマスの元に集まっていた。


「おめでとうございます」

「おめでとうございます、フィッツロイ侯爵」


 飛び交う祝福の言葉。笑顔を浮かべるリーマスのことを、メリルが微笑みながら見つめている。


(リーマスはもう、メリルに想いを伝えたのだろうか?)


 考えながら、胸がチクチクと痛む。

 僕だって記憶を失ったと嘘を吐いたあの日から、ずいぶんと自分の気持ちをメリルに伝えられるようになった。


 かわいい。
 綺麗だ。
 嬉しい。
 楽しい。
 幸せだ。


 けれど、本当に言うべきことはずっと、胸の奥にしまい込んだまま。言葉にできないままでいる。