【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「いいんですか? そんなことをして。後戻りができなくなりますよ?」

「もちろん。既に関係各所に根回しをしているのに、ヴェリーヌに後戻りをされては逆に困る」


 そう言ってあっけらかんと笑うアダルヘルムに、ヴェリーヌの瞳から涙がこぼれ落ちる。


「それと、来年はヴェリーヌがうちの国――ジュゼヴィルム王国に留学においでよ。結婚前に国について知っておいたほうがいいと思うんだ。あちらのほうが伸び伸びと過ごせると思うし」

「思うし?」

「たとえ一年でも、ヴェリーヌと離れて過ごすのは俺が寂しい」


 アダルヘルムの言葉に、ヴェリーヌはふふっと小さく笑う。


「行きますよ。アダルヘルム様と一緒ならどこまでも」


 ヴェリーヌを見つめながら、アダルヘルムは嬉しそうに目を細めた。