(時間がない)
本当は、もっと早くにこうすればよかったのだろう。しかし、失われた時間は戻ってこない。残された時間、努力するしかないのだ。
「ねえ、俺に当主の座を譲ったあとはどうする気なの?」
リーマスがそう尋ねてくる。僕は資料をめくりながら、ちらりとリーマスを見た。
「王都にある侯爵家名義の屋敷を一つもらって、文官に戻るよ」
それこそが、僕が元々予定していた人生だ。父さえ早死にしていなかったら、僕はただの文官として、メリルに出会うこともなく王都で暮らしていただろう。
「それじゃあ義姉さんのことは? どうする気?」
リーマスがまた質問を投げかけてきた。こたえようとして――けれどなんと返せばいいかわからず、僕は押し黙ってしまう。そんな僕を見かねてか、リーマスはさらに質問を重ねてきた。
「ロバートから兄さんたちの結婚の経緯は聞いた?」
「ああ」
記憶を失ったふりをした翌日、使用人頭のロバートからメリルとの契約結婚について説明を受けた。他人から聞く僕たちの状況というのは中々に歪で、聞いててとても苦しくなった。
と同時に、誰も僕が記憶を失ったという話が本当か疑わなかったことに、僕は心底驚いていた。どうやら僕のメリルに対する態度があまりにも違うので『間違いない』と断定されてしまったらしい。
本当は、もっと早くにこうすればよかったのだろう。しかし、失われた時間は戻ってこない。残された時間、努力するしかないのだ。
「ねえ、俺に当主の座を譲ったあとはどうする気なの?」
リーマスがそう尋ねてくる。僕は資料をめくりながら、ちらりとリーマスを見た。
「王都にある侯爵家名義の屋敷を一つもらって、文官に戻るよ」
それこそが、僕が元々予定していた人生だ。父さえ早死にしていなかったら、僕はただの文官として、メリルに出会うこともなく王都で暮らしていただろう。
「それじゃあ義姉さんのことは? どうする気?」
リーマスがまた質問を投げかけてきた。こたえようとして――けれどなんと返せばいいかわからず、僕は押し黙ってしまう。そんな僕を見かねてか、リーマスはさらに質問を重ねてきた。
「ロバートから兄さんたちの結婚の経緯は聞いた?」
「ああ」
記憶を失ったふりをした翌日、使用人頭のロバートからメリルとの契約結婚について説明を受けた。他人から聞く僕たちの状況というのは中々に歪で、聞いててとても苦しくなった。
と同時に、誰も僕が記憶を失ったという話が本当か疑わなかったことに、僕は心底驚いていた。どうやら僕のメリルに対する態度があまりにも違うので『間違いない』と断定されてしまったらしい。



