【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

 そうして義母は、僕の結婚相手を急いで見つけてきた。
 侯爵家を乗っ取るような力を持たず、侯爵家の当主の妻として恥ずかしくない家柄の女性――それがメリルだった。


 メリルは義母の遠縁の娘で、古くから続く名家出身だ。けれど、家はすこぶる貧乏で政治的な力は皆無――つまり、侯爵家にとってとても都合のいい結婚相手だった。


『リーマスが成人するまでの五年間、ウォルターと夫婦として生活をしてちょうだい』


 義母はメリルにそう要請した。
 結婚の見返りに、メリルの実家への支援と、離婚後の生活を保証すると約束して。

 こうして、僕はメリルと結婚することになったのだった。


***


「ウォルター様がわたくしを忘れてしまったの?」


 メリルはそうつぶやきながら、僕のことをじっと見つめている。悲しそうな表情――いや、僕の願望でそんなふうに見えているのかもしれない。僕は思わず「すまない」と返事をした。


「それにしても、こんなにも美しい女性が僕の妻なのだろうか? ……本当に?」


 言いながら、心臓がバクバクと鳴り響く。……どうか『そうだ』と肯定してほしい。契約で仕方なく一緒にいるとか、政略結婚だと返事をされたら悲しくなる。それが僕たちの実態だとわかってはいるが……。


「ええ、そうですよ」


 願いは届き、メリルはあっさりとそう口にして笑ってくれた。