「ど、どうしちゃったんですか、ウォルター様!?」
僕の腕の中でメリルが声を上げる。周囲で使用人たちが「転落のせいで記憶が混濁しているのでは?」とか「奥様だけを忘れてしまったのでは?」と口々に考えうる理由を挙げてくれた。
(そう……それでいい)
僕はメリルを忘れてしまった――どうかそう判断してほしい。
口下手な僕がこれまでの歪な夫婦関係を精算して、もう一度彼女と一からやり直すには、こうするしかないのだから。
***
話は五年前に遡る。
僕――ウォルター・フィッツロイは二十歳のときにフィッツロイ侯爵家当主となった。先代が急病により亡くなったためだ。
元々僕は当主を継ぐ予定がまったくなかった。なぜなら僕は父と身分の低い女性との間にできた子どもであり、正妻との間に生まれた弟のリーマスが次期当主と決まっていたからだ。
けれど、父が亡くなった時点でリーマスはまだ十三歳。とてもじゃないが当主を務めることはできない。
おまけに、我が国では先代が亡くなってから半年以内に成人男性が爵位を継ぐ必要があったため、弟が成人するまでの間は僕が当座の当主を務める必要があった。
僕の腕の中でメリルが声を上げる。周囲で使用人たちが「転落のせいで記憶が混濁しているのでは?」とか「奥様だけを忘れてしまったのでは?」と口々に考えうる理由を挙げてくれた。
(そう……それでいい)
僕はメリルを忘れてしまった――どうかそう判断してほしい。
口下手な僕がこれまでの歪な夫婦関係を精算して、もう一度彼女と一からやり直すには、こうするしかないのだから。
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話は五年前に遡る。
僕――ウォルター・フィッツロイは二十歳のときにフィッツロイ侯爵家当主となった。先代が急病により亡くなったためだ。
元々僕は当主を継ぐ予定がまったくなかった。なぜなら僕は父と身分の低い女性との間にできた子どもであり、正妻との間に生まれた弟のリーマスが次期当主と決まっていたからだ。
けれど、父が亡くなった時点でリーマスはまだ十三歳。とてもじゃないが当主を務めることはできない。
おまけに、我が国では先代が亡くなってから半年以内に成人男性が爵位を継ぐ必要があったため、弟が成人するまでの間は僕が当座の当主を務める必要があった。



