【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「高位貴族であるわたくしたちが恋愛結婚をできるなんて、夢のまた夢ですわ。ヴェリーヌ様もそれはわかっていらっしゃいますでしょう?」

「え、ええ……」

「家格が釣り合うかどうか、政治的な影響、資産の兼ね合いなど、考慮すべきことがたくさんありますものね。その点、隣国の子爵令息はヴェリーヌ様にふさわしくないと思いますの。留学期間もあとほんの数ヶ月しか残っていないでしょう?」

「……!」


 隣国の子爵令息とはアダルヘルムのことだ。ユーフェミアはいつの間にか、ヴェリーヌとアダルヘルムが恋人同士だということに勘付いていたらしい。


「将来の約束ができないお付き合いを重ねても、双方にとっていいことはなにもないのではありませんか?」

「そ、れは……」

「ヴェリーヌ様、わたくしはあなたのためを思って言っていますのよ?」


 ユーフェミアがヴェリーヌの手をギュッと握る。


「今度の夜会でわたくしがヴェリーヌ様にふさわしい男性を紹介しますから。楽しみになさっていてね?」


 ユーフェミアの後ろ姿を見送りながら、ヴェリーヌは自分の胸にそっと手を当てた。