【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

***


 翌日から、カレンの日常はガラリと変わった。


「おはようございます、カレン様」


 侍女たちが幾人もやってきて、美しいドレスを着せられ、化粧をしてもらい、髪型を整えてもらう。頭のてっぺんからつま先まで磨き上げられたあとは、アレクシスと一緒に朝食の席についた。


「おはようございます、カレン様」


 アレクシスが満面の笑みを浮かべる。それだけで周囲の人間が大きくざわめいた。


「あのアレクシス様が笑顔をお見せになるなんて」
「信じられない」
「美しすぎる……!」


 当人を目の前にそんな本音を口にするものはいなかったが、カレンには彼らの心の声がはっきりと聞こえてきた。


(そういえば難攻不落、絶対零度のアレクシスなんて呼ばれているんだっけ)


 カレンが思い出し笑いをしていると、アレクシスがうっとりと頬を染め、眩しそうに目を細めた。


「あ、あの……」

「可愛い」


 感慨深げにつぶやくアレクシスに、カレンの心臓がドキッと跳ねる。母親の死後、誰かに褒められた経験がないので、どう反応すればいいかわからない。カレンはそっと視線をそらした。


「ところで、王族の婚姻って、そんなに簡単に認められるものじゃないですよね? 家格や人柄を見てから判断するものでしょう? こんなふうに私を城に留めたりして、大丈夫なんですか?」

「普通はそうかもしれません。けれど、私の場合は違います」

「ええ?」


 答えは朝食後すぐに明らかになった。
 アレクシスがカレンを見つけたという報告を聞いた国王に呼び出されたのだ。