【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

『私、あなたのことが好きだったの。知らなかったでしょう?』


 アレクシスは信じられない気持ちのまま、カレンのことを抱きしめる。カレンはそっと目を細めた。


「本当はね、ずっとずっとあなたの手を取りたかったの。あなたが差し出してくれる優しさを、想いを、全部受け取って抱きしめたかった。けれど、今世の私にはそれが許されなかったから』

『叶えます』


 アレクシスが言う。カレンはうなずきながら、ゆっくりと目をつぶった。


『待っていてください。私は絶対、なにがあってもカレン様を見つけ出します』

『ええ』

『約束ですよ。今度会えたら、あなたがどれだけ拒否しようと、私はもう止まりません』

『いいわよ』


 クスクス、とカレンが笑う。二人は抱きしめあったまま、燃え盛る炎の中に消えていった。


◆◇◆


「そ、れは、その……」


 作り話じゃないのですか?という言葉を必死で飲み込み、カレンはアレクシスを見つめる。アレクシスはニコリと微笑んだ。


「信じられないという気持ちはわかります。これまでこの話を聞いた全員が『嘘だろう』という表情を浮かべました」


 アレクシスは王弟なので、表立ってなにかを言える人間はほとんどいないのだろう。カレンは両手でそっと口元を隠した。


「けれど、私にとってはとても大切で譲れない記憶――約束なんです。誰にどう思われても構いませんでした」


 アレクシスはそう言いながら、カレンの頭をそっと撫でる。カレンは思わずドキッとした。