【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

***


 夜会の後、カレンはアレクシスから半ば強引に城内へと連れて行かれた。


「あの、ここは?」

「カレン様のお部屋です。ずっと前からあなたに会える日を夢見て準備をしておりました」


 アレクシスはそう言ってニコニコと笑う。
 案内されたのはとても広く、丁寧に手入れをされた部屋だった。上品で落ち着いた色合いの調度類に、ふかふかのソファとベッド。壁面には鏡台や本で埋め尽くされた棚が揃っており、すでに住人がいるとしか思えないほどに充実している。


「素敵……だけど」

「ダメです」


 まだなにも言っていないのに、アレクシスはカレンの主張を封殺する。それからカレンを抱きしめた。


「あなたは私と結婚をしてここで暮らすんです。ひたすら幸せに、毎日笑って生きるんです」


 カレンの手のひらに口付けながら、アレクシスが懇願する。カレンは思わずドキッとした。


「あの、そろそろ教えてくださいませんか? どうして私のことを知っているんです? どうして私に親切にしてくださるんですか?」


 カレンが尋ねると、アレクシスがゆっくりと深呼吸をする。それから彼は徐ろに口を開いた。


◆◇◆

 アレクシスには前世の記憶がある。今より数百年前に生きた記憶だ。
 当時、国々は領土を巡って激しく争っており、アレクシスが生まれた国も不安定な情勢の中にあった。
 そんな中、安寧を求めて隣国と同盟を結ぶことになり、両国の関係を深めるために末姫が隣国へ向かうことになった。


「これが前世のカレン様です」

「私が王女?」


 カレンが尋ねると、アレクシスが大きくうなずいた。