【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

***


「ヴェリーヌ様、この後少しお時間をいただけませんか?」

(またか)


 それから数日後の放課後、ヴェリーヌはまたユーフェミアから声をかけられた。用事があると嘘をつくこともできるが、日程は延ばせたとしても、話から逃げることはできないだろう。仕方がない――ユーフェミアについていったヴェリーヌは、内心で大きくため息をついた。


「ヴェリーヌ様はご自分の将来について、どのようにお考えなのでしょう?」

「将来ですか?」


 いつものように本題を切り出したユーフェミアは、困ったように首を傾げる。


「ほら、わたくしは王太子殿下との婚約が決まっておりますでしょう? あなたもそろそろ、婚約者を選ばなければならないと思いまして」

(盛っ大なお世話です!)


 ヴェリーヌは感情が表情に出ないよう細心の注意をはらいつつ、ニコリと微笑んでみせた。


「公爵家の令嬢ともなれば、お相手は高位貴族に限られるでしょう? わたくしたちにふさわしい男性なんて、そう多くありませんもの。お急ぎになったほうがいいのではございませんか?」


 けれど、ユーフェミアはヴェリーヌの気持ちなどお構いなしに、グイグイと押し迫ってくる。


「あの、私は別に――」

「まさか、恋愛にうつつを抜かして婚約を先延ばしにする、なんておっしゃいませんよね?」


 ジロリ、とユーフェミアがヴェリーヌを睨む。ヴェリーヌはウッと息をのんだ。