【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「申し訳ございません。先程申し上げたとおり、私と殿下はこれが初対面だと思うのです」


 カレンの言葉にアレクシスがピタリと止まる。彼は瞳を潤ませつつ「いいんです」と言ったかと思うと、カレンを強く抱きしめ直した。


「覚えてなくても構いません。けれど私は、ずっとあなたに会いたかった。どうしても、カレン様の願いを叶えたかったんです。そのために生まれてきたんです」

「私の願い?」


 願い事なんて一度もしたことがないと首を傾げるカレンに小さく笑ったあと、アレクシスは真剣な表情を浮かべた。


「今の私には力がある。あなたが望まずとも――たとえあなたに「やめろ」と命令をされようとも、あなたを救うことができます。私はもう、あなたの命令には従いません。思うがまま行動させていただきます」


 アレクシスはそう言って、床にしゃがみこんだままのドーラのもとへと向かう。ドーラは「ヒッ」と声を上げながら後ずさった。


「カレン様に辛い思いをさせた報いは必ず受けてもらう。おまえも、おまえの両親も無事では済まない。覚悟しておくといい」

「あっ……あぁ……」


 ドーラが恐怖で泣き崩れると同時に、アレクシスがニコリと笑う。カレンはどう反応したらいいのかわからないまま、その場に立ち尽くした。