【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「世間知らずのお姉様は知らないでしょうけど、アレクシス様ってとんでもなく美しい男性なんですって。その上どんな女性にも冷たく接するから、難攻不落、絶対零度のアレクシスなんて呼ばれているのよ」

「そう……」

「そんな男性を射止められたら最高よね。まあ、お姉様には関係ない話だけどっ」


 ドーラはそう言ってふふっと笑う。残念ながらカレンも同意見だった。
 なにせ、カレンのドレスはドーラのお下がりでブカブカ、色や雰囲気もまったく似合っていないし、化粧も髪型も申し訳程度に整えただけである。こんな姿を見られたら伯爵家の恥――なのだが『王命に従い夜会に参加をした』という大義名分が欲しいだけなので、これで十分と判断したようだ。


(本当に、私には関係のない話だわ)

 カレンは心のなかで静かに笑った。


 城に到着するとすぐに、二人は会場へと案内された。きらびやかな会場に数十人の少女が集まっている。事前情報どおり、十六歳から十八歳の貴族の令嬢しか招待されていないらしい。


(どうしてこんなことをするのかしら?)


 アレクシスが本当に結婚をしたくないのなら、こんなふうに令嬢を集める必要はないだろう。全力で拒否をするか、お飾りの妻を得ればいいだけの話だ。
 けれど彼は、王命を下してまで年頃の令嬢全員と会うきっかけを作っている。なにか理由があってのことなのだろうが――