【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

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 それから数日後のこと、カレンはドレスを着て馬車に揺られていた。


「お姉様を同行させるなんて、本当に信じられないわ。お父様ったら、王命なんて無視しちゃえばいいのに」


 向かいの席でドーラがブツブツと文句を言っている。


 今夜は三年に一度開かれる王家主催の夜会だ。参加者は十六歳から十八歳までの貴族の令嬢と決まっており、他の参加者は王室関係者のみという奇妙な夜会で、今年で四回目の開催となる。


「でもまあ、お姉様がアレクシス殿下の結婚相手に選ばれることなんて絶対にありえないもの。お父様も一瞬だけ会場に入ればそれでいいって話していたし、仕方ないわよね」


 ドーラが唇を尖らせながらつぶやいた。

 この夜会は王弟のために開かれているともっぱらの噂だ。
 王弟アレクシスは二十五歳だが独身で、これまで婚約者はおろか、浮いた噂すら立ったことがなかった。王家は彼に結婚をさせるため、こうして定期的に夜会を開催し、花嫁探しに躍起になっているらしい。

 しかも、この国では夜会とは別に、十六歳になるまでに婚約を希望する令嬢は、事前にアレクシスと面会をしなければならないという謎のルールまで存在していた。