【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「それは……怖かったんだ」

「え?」


 何が?とアンジュが首を傾げる。ミゲルは頬を染めつつ、そっと下を向いた。


「君がオーガストのもとに戻ってしまうことが。もしも『やっぱりあいつのほうがいい』と言われてしまったらと……」


 アンジュがふふっと声を上げて笑う。その表情からは、憂いも悲しみも、自分を否定する様子もまったくうかがえない。ミゲルにはそれが、あまりにも嬉しい。


「アンジュ、君は僕にとって、何よりも大切な女性だよ」


 どちらともなく口づけを交わすと、二人は満面の笑みを浮かべるのだった。