【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「頼む、アンジュ! 戻ってこい! 戻ってきてくれ! 俺にはお前が必要なんだ! お願いだから……」


 オーガストはおそらく、生きるか死ぬかの瀬戸際にいるのだろう。彼はアンジュに縋り付くと、涙ながらに懇願する。


「オーガスト様」


 アンジュはオーガストの側に膝をつき、彼の肩をぽんと叩いた。期待に満ちた表情を浮かべるオーガストに向かってニコリと微笑むと、アンジュはそっと首を横に振る。


「絶対嫌です。あたし、都合のいい女はやめましたので」

「なっ! アンジュ……!」


 声なき声があたり一面に響き渡った。


***


 それから数カ月。


「『聖女アンジュへ――君の結婚を心から祝福する』か」


 一枚の手紙を手に、ミゲルが優しく微笑む。
 それはこの国で最も尊い男性――国王陛下からアンジュに向けて綴られた手紙だ。