【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「アダルヘルム様……聞いていらっしゃったんですね」

「教室から連行されるのが見えたから心配でね」


 ヴェリーヌの隣にアダルヘルムが腰掛ける。アダルヘルムはヴェリーヌの頭をポンポンと優しく撫でた。


「言い返せばよかったのに。ヴェリーヌならあのぐらい、論破できるだろう?」

「しませんよ。それをして、困るのは他のクラスメイトたちですもの。私とユーフェミア様、どちらの味方につくかヤキモキさせたり、気まずい雰囲気になったら気の毒ですから」


 どちらも公爵令嬢という高い身分を持つヴェリーヌとユーフェミアは、表面上だけでも仲良くしておく必要がある。対立して派閥ができてしまっては、他のクラスメイトたちが平穏な学生生活が送れなくなるのだ。


「だけど、このまま抱え込んでいたらヴェリーヌの気が収まらないだろう?」

「おっしゃるとおりです。なので――今から独り言をいうので、聞き流してもらえます?」


 ヴェリーヌは大きく息を吸うと、眉間に思い切りシワを寄せた。