【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「もっと早くにあなたに出会いたかった」

「まあ……! 嬉しいです。ありがとうございます」

「だけど、僕は今からでも遅くはないと思っています。どうか、あなたの名前を聞かせてくださいませんか?」


 ひざまずき、女性に向かって手を差し出す。ラーベルはとびきりの笑顔を浮かべた。


「私の名前は」

「名前は?」


 ラーベルが期待の眼差しで女性を見る。女性はしばらくラーベルを見つめたあと、ふぅと小さく息をついた。


「私の名前は――アダリーシアと言いますの」

「…………え?」


 ラーベルが大きく目を見開く。それから、彼の体にゾクゾクと悪寒が走った。