【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

(どうせあいつは今日も真紅のマーメイドドレスだろう?)


 空気を読まない、周りに合わせることを知らない愚かな女。本人は『個性的』『自分を持っている』とでも思っているのだろうが、周りからはみ出し、尖った個性を誇ったところでなんになるというのだろう?


(まあ、僕にあれだけ言われたんだ。アダリーシアだって少しは懲りただろう? 多少なりとも己を見直すはずだ)


 ラーベルはアダリーシアとの婚約を破棄するつもりはさらさらなかった。
 生家と同格の侯爵家で、大のつく資産家、結婚すれば爵位だってもらえる。アダリーシア本人はラーベルの理想とかけ離れているが、結婚相手としては実に理想的な相手だった。


 とそのとき、ラーベルは思わず息を呑んだ。


(なんて美しい女性なんだ……!)


 金色のふわふわした髪の毛に、大きくて美しい緑色の瞳、レースがふんだんに使われた白いドレスを見事に着こなした愛らしい女性がホールの中央にいて、一瞬で目を奪われてしまった。微笑みを浮かべた柔らかな表情、思わず触れたくなるような真っ白な肌、ほんわかした雰囲気など、すべてがラーベルにとって理想的だ。


(誰なんだ、彼女は)


 学園に在籍していた三年間、ラーベルはその女性を見たことがなかった。もっと早くに見かけていたら、絶対に声をかけたというのに。