【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「リヴェルト様、私はあちらのほうにおりますので」

「……わかった。俺もすぐに行くから」


 リヴェルトはユレイヤの手の甲にそっと口づけをすると、ユレイヤからそっと離れていく。


(さてと)


 ユレイヤは会場の隅に移動をした。が、その時ふとチェリーヌとパートナーがひそひそ話をしながら会場を出るのが目に入る。


(なにを話しているのかしら?)


 なぜだか異様に気になり、ユレイヤはそっと二人の後を追った。


「――ねえ、本当に頼んだわよ?」

「わかってますって。そんなに僕が信用できないんですか?」


 騎士がチェリーヌを抱きしめる。ユレイヤは思わずドキッとした。


(私ったら、二人はただ恋人同士の会話を楽しんでいるだけなのに)


 こんなふうに盗み見をするなんていけないことだ。ユレイヤはくるりと踵を返す。


「リヴェルトから、ちゃんと当日の同行メンバーに選んでもらったのよね?」

「ええ。御者にも『お声掛け』しましたし、なんの問題もありません」

(……え?)


 その途端、ユレイヤの心臓がドクンと大きく跳ねた。リヴェルトの同行メンバー、御者という言葉を結びつけながら、そんなまさかと首を横に振る。