【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「それにしても、敗戦の償いがこんな貧相な姫君だなんて、あなたの国って本当に大したことないのね」


 ピクリ、とユレイヤが体を震わせる。母国を馬鹿にされ、平気でいられるはずがない。けれど、ここで反論をすれば相手の思う壺。大事にされ、新たな戦争の火種になるかもしれない。


「まあ、そうよねぇ。両国になにかあった時にいつでも殺せる――それがあなたなんだもの。ユレイヤ様はリヴェルトの妻じゃなくて、ただの人質。どうせすぐ死んじゃうの。そしたら、リヴェルトはあたしがもらってあげるから、安心してよね」


 ユレイヤの瞳に涙がたまる。こんなことで泣いてたまるか――そう思うものの、悔しくて惨めでたまらなかった。


「――いい加減にしろ」


 と、頭上で声が響く。顔を上げると、そこにはリヴェルトがいた。


「え? リヴェルトったら、なんのことを言ってるの?」

「とぼけるな、チェリーヌ。小声でユレイヤのことを罵っていただろう?」


 リヴェルトがチェリーヌの腕を掴み、ユレイヤから遠ざける。チェリーヌは忌々しさを押し隠し、無理やり笑みを作った。


「別にいいじゃない? このぐらい、言われて当然でしょう? だってあたし、嘘は何一つ言ってないもの」

「いいわけないだろう! ユレイヤは俺の妻だ。馬鹿にすることは許さない」


 リヴェルトの言葉に、ユレイヤの瞳から涙がこぼれる。胸がたまらなく温かかった。