【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

(どうしてここに?)


 一年前、彼は自分を迎えになど来なかった。初めて顔を合わせたのは夕食の席のことで、そこでユレイヤはリヴェルトに毒を盛った疑いをかけられたのだ。リヴェルトが体調を崩したといっても、軽い腹痛によるもので、毒のはずがない――完全ないいがかりだった。けれど、ユレイヤはそのせいで一年近くもの間、離れに幽閉されていたのだ。忘れられるはずがない。


「ユレイヤ……だよな?」

「そうですが」


 初対面だから、ユレイヤの顔を知らないのは仕方がないことだが、まるで化物を見るような表情をされては悲しくなる。リヴェルトはユレイヤの手を取り立ち上がらせると、ギュッと力強く抱きしめた。


「え?」

「よく……よく来てくれた」


 あまりの出来事にユレイヤは戸惑う。
 おかしい。リヴェルトはこんなことをする人間ではない。
 というか、彼は前世で自分を殺した張本人ではないか。ユレイヤはやんわりとリヴェルトを押し返しつつ「歓迎いただけて嬉しいです」と返事をする。


 リヴェルトに促されるままに、ユレイヤは城内へ入った。


「ここが君の部屋だ」

「私の? ……ここが、ですか?」


 ユレイヤは驚きのあまり息を呑む。
 案内された部屋は、リヴェルトの暮らす棟にある大きな一室だった。調度品も上品で美しく、母国にいた時と同じかそれ以上に豪華だ。


「けれど、私は敵国の姫なのに」

「だが、今日からは俺の妻だ」


 リヴェルトはそう言ってユレイヤの手を握る。