【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

「ユレイヤ、準備はできたのか?」


 と、リヴェルトがユレイヤの部屋へとやってきた。
 眩い銀の髪に、神秘的な紫色の瞳。女性と見まごうほどの中性的な美しい男性で、年齢はユレイヤの四つ年上の二十一歳の青年だ。


「いいえ。申し訳ないことに、公務に適した着替えがなく、なにも準備ができておりません」

「……そうか」


 リヴェルトはため息を一つ、使用人たちを呼び寄せる。すると、不機嫌な表情をした侍女たちが数人、ユレイヤの元へとやってきた。
 彼女たちは無言のままユレイヤの身支度を進め、終わると同時にため息を吐きながら去っていく。


「ありがとう」


 ユレイヤがそう声をかけたものの、振り返るものは誰もいなかった。


「ユレイヤ、行くぞ」

「はい、リヴェルト様」


 準備が終わると、ユレイヤはリヴェルトに連れられ馬車へと乗り込む。
 人質に過ぎないとはいえ、二人は夫婦だ。このため、ユレイヤはリヴェルトに割り当てられた公務に同席する必要があった。


「その後、変わりはないか?」

「……はい。リヴェルト様もお元気そうで何よりです」


 馬車の中で、二人は当たり障りのない会話を交わす。互いのことをほとんど知らないから、どうやっても会話が弾まないのだ。


(もっと仲良くできたらいいのに)


 自分は人質で、形だけの夫婦だとわかっている。だが、リヴェルトはユレイヤにとってこの国で唯一頼れる男性なのだ。普通の夫婦のようにはなれずとも、せめてもう少し仲良くなりたい。