(どうしてこんなふうになってしまったのかしら)
ユレイヤは小さくため息を吐く。
王子妃とは思えないほど埃っぽい小さな部屋に、みすぼらしいドレス。ユレイヤが声をかけたところで侍女も使用人も、ひとりも駆けつけてはくれない。
頼みの綱であるはずの夫リヴェルトはというと、ユレイヤとは別の棟で暮らしており、顔を合わせることすら滅多になかった。
(仕方がないわよね。私は所詮“人質”に過ぎないのだし)
窓の外を眺めながら、ユレイヤはそっと胸を押さえる。
ユレイヤは元々、隣国ウクレヴィヌの末姫だった。ウクレヴィヌとここトゥワイリヒは長年に渡って激しく争っており、昨年ウクレヴィヌの敗戦が決まった。これによりウクレヴィヌは多額の賠償金を支払うことになったのだが、トゥワイリヒはそれだけでは納得しなかった。平和への担保が必要だと――そのため、ユレイヤが第三王子であるリヴェルトに嫁ぐことになったのだ。
妻とは名ばかりの人質の姫君。元敵国の王族なのだから、当然大切にされるはずがなかった。
『リヴェルト様が体調をお崩しになった! ユレイヤ様が毒を盛ったに違いない!』
『ユレイヤ様ったら、自分のことぐらい自分でできないのですか? ウクレヴィヌって、本当につまらない国ですのね』
『もし万が一リヴェルト様と寝室を共にしたら、眠っている間に刃物で刺し殺そうとするに違いない!』
『あなたさえ……! あなたさえいなければ、あたしがリヴェルトの正妃になれたのに!』
これまで浴びせられてきた数々の罵詈雑言を思い出しながら、ユレイヤの目頭が熱くなる。否定も抗議も、どんな言葉も、この国の誰にも届くことはなかった。
ユレイヤは小さくため息を吐く。
王子妃とは思えないほど埃っぽい小さな部屋に、みすぼらしいドレス。ユレイヤが声をかけたところで侍女も使用人も、ひとりも駆けつけてはくれない。
頼みの綱であるはずの夫リヴェルトはというと、ユレイヤとは別の棟で暮らしており、顔を合わせることすら滅多になかった。
(仕方がないわよね。私は所詮“人質”に過ぎないのだし)
窓の外を眺めながら、ユレイヤはそっと胸を押さえる。
ユレイヤは元々、隣国ウクレヴィヌの末姫だった。ウクレヴィヌとここトゥワイリヒは長年に渡って激しく争っており、昨年ウクレヴィヌの敗戦が決まった。これによりウクレヴィヌは多額の賠償金を支払うことになったのだが、トゥワイリヒはそれだけでは納得しなかった。平和への担保が必要だと――そのため、ユレイヤが第三王子であるリヴェルトに嫁ぐことになったのだ。
妻とは名ばかりの人質の姫君。元敵国の王族なのだから、当然大切にされるはずがなかった。
『リヴェルト様が体調をお崩しになった! ユレイヤ様が毒を盛ったに違いない!』
『ユレイヤ様ったら、自分のことぐらい自分でできないのですか? ウクレヴィヌって、本当につまらない国ですのね』
『もし万が一リヴェルト様と寝室を共にしたら、眠っている間に刃物で刺し殺そうとするに違いない!』
『あなたさえ……! あなたさえいなければ、あたしがリヴェルトの正妃になれたのに!』
これまで浴びせられてきた数々の罵詈雑言を思い出しながら、ユレイヤの目頭が熱くなる。否定も抗議も、どんな言葉も、この国の誰にも届くことはなかった。



