【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

(なにかしら?)


 リーヴェス様と一緒に後ろを振り返る。


「お姉様……?」


 薔薇色のドレスと大粒のルビーのネックレスを華やかに着こなし、優雅に微笑んでいるとてつもなく美しい女性。それは間違いなくわたしの大好きなお姉様――なのだけど、隣に並ぶ男性の姿に目が釘付けになる。


「お姉様と一緒にいらっしゃるのは王太子殿下、よね?」


 鮮やかな紅色の髪の毛が印象的な美しい男性。絵でしか見たことがないから確証が持てない。けれど、隣でリーヴェス様がコクリとうなずき、わたしは思わず息を呑んだ。


「エステル」


 と、まだ状況の飲み込めていないわたしのもとに、お姉様がやってきた。王太子殿下も一緒だ。わたしは急いで頭を下げ、おそるおそるお姉様の顔をうかがう。


「これまで事情を話せなくてごめんね」

「お姉様? それって……」

「わたくしね、王太子殿下と婚約することが決まったの」


 その瞬間、一気に涙が込み上げてきて、わたしは思わず両手で口を覆った。


「お、お姉様! 婚約って……」


 わたしだけじゃなく、周囲からもどよめきが起きる。それからすぐに「おめでとうございます」と祝福の声が相次いだ。