【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?

***


(どうしてこんなことになってしまったんだろう)


 自問自答を繰り返しながら涙がこぼれる。

 あのあと、両親から呼び出されたわたしは、お姉様と同じこと――つまり、お姉様のかわりにリーヴェス様と結婚するよう言い渡されてしまった。


『嫌です、リーヴェス様とは結婚できません!』

『だけど、エステルだって、リーヴェス様のことを慕っていただろう?』


 父からそう言われたときは、ショックのあまりその場で泣き崩れた。結局、わたしの気持ちは筒抜けだったんだなって。そのせいでわたしはまた、お姉様から大切なものを奪おうとしているんだって思い知ったから。


「許せない」


 わたしはわたしを。許しちゃいけない。
 リーヴェス様には絶対、お姉様と結婚していただくんだから。


「エステルお嬢様」


 とそのとき、侍女から声がかけられる。


「リーヴェス様がいらっしゃっています。お嬢様とお話がしたいと」

「リーヴェス様が?」


 名前を聞いた途端、トクンと心臓が高鳴った。
 ……って! それじゃダメなんだってば!

 わたしは首を横に振り「会わないって伝えて」と侍女に言う。
 侍女は困惑しつつも、わたしの言う通りにしてくれた。

 だけど、窓から観察をしているのに、いつまで経っても屋敷から馬車が出ていく様子がない。


「エステル、出てきなさい」


 両親から呼びかけられても、わたしは眠っているふりをした。部屋に押し入られ、会うように説得されても「会いたくない」と頑なに拒否をした。
 そんな攻防が何度か続いたのち、屋敷から馬車が出ていく音が聞こえてくる。


(ようやく諦めてくれたのね)


 ホッと胸を撫で下ろしていたら、部屋の扉がノックされた。