「……な、ない」
井田先輩はついに膝を屈し、へたり込んでガタガタ震えた。
「ボクが悪かった……もう二度と中村さんには近づかないし、他人に暴力を振るったりもしない。悔い改めると誓う。だからどうか許してくれ。頼むよ白石くん……」
井田先輩は泣きながら手を組み、哀願した。
「……執行猶予をあげよう」
しばらく無言で井田先輩を見ていた有栖先輩は、不意に殺気を収めた。
「あ、ありがとう……!」
井田先輩の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
「あくまで猶予ってことを忘れないでね。わかったら話は終わりだ。帰っていいよ」
有栖先輩が親指で屋上の出入り口を示すと、井田先輩は脱兎の勢いで逃げた。
すぐにその足音は遠ざかり、聞こえなくなった。
生温い風が吹いて、有栖先輩の艶やかな髪が揺れる。
「こんなものでどうかな? 甘かった?」
事件の終焉を告げるような風を受けながら口角を上げる有栖先輩。
その笑顔はいつもの――わたしの知っている、優しくて穏やかな有栖先輩のものだ。
「いえもう十分でしょう……むしろ十分すぎておつりが来ますよ」
拓馬が苦笑いする。
「あ、あの、ありがとうございました、白石先輩! 助かりました、本当に……!!」
由香ちゃんは深々と頭を下げた。
「いえいえ、どういたしまして。お礼なら拓馬に言って。今回の功労者は間違いなく彼だからね」
有栖先輩が手を振って微笑む。
「はい。ありがとう、黒瀬くん。本当にありがとう。それから、本当にごめんね。わたしのせいで」
「もういいって」
「いやいや、良くないよ。顔腫れてるよ。保健室行こう」
わたしは拓馬の手を引っ張り、歩き出した。
井田先輩はついに膝を屈し、へたり込んでガタガタ震えた。
「ボクが悪かった……もう二度と中村さんには近づかないし、他人に暴力を振るったりもしない。悔い改めると誓う。だからどうか許してくれ。頼むよ白石くん……」
井田先輩は泣きながら手を組み、哀願した。
「……執行猶予をあげよう」
しばらく無言で井田先輩を見ていた有栖先輩は、不意に殺気を収めた。
「あ、ありがとう……!」
井田先輩の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
「あくまで猶予ってことを忘れないでね。わかったら話は終わりだ。帰っていいよ」
有栖先輩が親指で屋上の出入り口を示すと、井田先輩は脱兎の勢いで逃げた。
すぐにその足音は遠ざかり、聞こえなくなった。
生温い風が吹いて、有栖先輩の艶やかな髪が揺れる。
「こんなものでどうかな? 甘かった?」
事件の終焉を告げるような風を受けながら口角を上げる有栖先輩。
その笑顔はいつもの――わたしの知っている、優しくて穏やかな有栖先輩のものだ。
「いえもう十分でしょう……むしろ十分すぎておつりが来ますよ」
拓馬が苦笑いする。
「あ、あの、ありがとうございました、白石先輩! 助かりました、本当に……!!」
由香ちゃんは深々と頭を下げた。
「いえいえ、どういたしまして。お礼なら拓馬に言って。今回の功労者は間違いなく彼だからね」
有栖先輩が手を振って微笑む。
「はい。ありがとう、黒瀬くん。本当にありがとう。それから、本当にごめんね。わたしのせいで」
「もういいって」
「いやいや、良くないよ。顔腫れてるよ。保健室行こう」
わたしは拓馬の手を引っ張り、歩き出した。

