陽向の心残り

南京鍵を開け中に入ると、外の寒さとはまた違うひんやりとした空気が肌を掠めた。

壁一面の本棚に古書がびっしりと並び、奥には大小様々な箱や置物がざっくばらんに置かれている。

そのどれもがかなりの年代物に見える。

浩輔はそこにあった古いタンスのホコリをはらって上に腰かけた。


「で。お祓いのご相談ってことでいい?」

「えっ、やだ怖い」

「浮遊霊の分際で怖いとか言うな」


容赦ない浩輔に、陽向はあははと笑ってる。


「やっぱり陽向って浮遊霊なんだ……」

「おう。ばちぼこに浮遊霊」


隣の陽向を見ると、陽向も私を見ていた。


「浮遊霊っぽい?」

「さあ……」


このふにゃ笑顔、生きてる時と変わらない。

身にまとっている制服も事故に遭う前と同じものだ。

ただ(さわ)れないからか、匂いがしないからか、気配がない。



「で、結論から言うと。このままだと陽向は悪霊になる」

「「え⁉︎」」


突然とんでもないことを言う浩輔に、陽向と私は同時に声をあげた。