陽向の心残り


一人のはずの部屋で、耳馴染みのある声が私を呼んだ。


ゾクリと体が震え、すぐさま声のしたほうへ振り向く。



「やっほー」



そこには、能天気な笑顔の陽向が立っていた。



「……え?」



陽向は私の横に長い足を折ってしゃがみ、目を丸くする私を嬉しそうに眺める。

私はハッと陽向の祭壇に目を戻す。

やっぱり陽向の写真と、遺骨の入った壺がある。

そしてもう一度隣を見る。

すると、いる。


ニコニコ笑顔で私を見る、三次元の陽向が。



「ひ、陽向……?」

「陽向で〜す」


このゆるい空気。

無造作に伸びたフワフワの髪、笑うと線になる目に大きめの口と、色白で線の細い体。

そこには紛れもなく、死んだはずの陽向がいた。



「……」

「希咲?」

「……」

「おーい」

「…………」

「あはは、かたまってんのウケる」



そう笑う陽向は、やっぱり私の知ってる陽向だ。



「……なんで?」



ようやく絞り出した疑問に、陽向は困り眉をさらに下げて肩をすくめた。


「わかんない」


それから私の最中に手を伸ばすと、最中も私の手も通り抜けて、(くう)を掴んだ。


そして、申し訳なさそうに言う。



「幽霊になったっぽい」