陽向の心残り


「これからもそばにいてよ……陽向……っ」



あの日、私が怒って帰らなければ。


『家まで送るよ』って陽向の言葉に素直に頷いてたら。


今日もこの公園でダラダラ話して、

恋人になれない幼なじみのままでも、当たり前な毎日を続けていたかもしれないのに。




「置いていかないで。私も一緒に連れてって」



陽向がいない未来なんてありえない。


陽向のいない日常を生きていく自信なんてない。



「だめだよ。これ以上みんなを悲しませないで」

「っ……、勝手すぎるよ」



もう何を言っても無駄なんだから、最後ぐらい笑顔で見送りたいのに

涙と憎まれ口ばかりが出てきてしまう。



「ごめん」



陽向が、感触のない腕で私を抱きしめた。



「一日の終わりにここで希咲と話した時間が、俺の宝物だった。すっげぇ幸せな人生だった」



耳元で話してるはずの声は遠く、小さい。



「希咲も。絶対幸せになって」



言い聞かせるように言った陽向に〝行かないで〟って言葉を飲み込んで、目を閉じた。