陽向の心残り


「ひな、た……?」



突然のことに血の気がサァ、と引いていく。


なんの心の準備も出来てない。


自分の透けていく手を見た陽向は、「あー」と納得したように緊張感のない声をもらした。



「そっか。コンポタ」


「……!」



陽向が言って、私も気が付いた。



〝今度コンポタ奢るから許して〟



最期の夜。

陽向が事故に遭う直前、怒って帰る私の背中に、陽向が言ったセリフ。



「嘘……心残り、それ……?」



あたたかな光を放って、ジワジワと体を薄くしていく陽向がくは、と笑う。


「そうみたい。これ買わないと仲直りした気しなかったんだよなー」

「っ……バカじゃないの」



あんなの私が一方的に怒ってただけで、陽向は何も悪くないのに。

わざわざ幽霊になって戻ってくるほど、心残りだったってこと?



「コンポタ奢ったから許してくれる?」

「っ……、」


私は首を横に振った。


「やだ、許さない」

「えー」



困った顔で笑う陽向の体はまたさらに薄くなって、空にキラキラしたものが立ち上っていく。

このまま陽向は空に行ってしまうんだろう。