陽向の心残り





「……」


「……」


「…………」



陽向が目をパチパチさせている。

私も目をパチパチさせている。



「……ん?」



あたりはしんと静まり返っている。


おかしい。

何も起こらない。

雰囲気は完全にクライマックス以外の何者でもないのに、何も起こらない。


コホンと陽向が咳払いした。


「好きです!」

「は、はい」


あたりはしんと静まり返っている。

負けじと陽向は声を大きくする。


「っ、好きだ!大好きだ!」

「うん!」



……?



「希咲ー‼︎好きだ‼︎めっちゃくちゃ好ぅっきぃー‼︎」


先ほど恥じらっていた人とは思えない告白っぷりにも関わらず、やっぱりあたりはしんと静まり返っていて、とうとう陽向は空に向かって叫びだす。



「誕生日に希咲に貰ったペンを抱いて眠るぐらい好きだー‼︎授業中ノートにめっちゃ名前書いて最終的に『楠尾希咲』で画数調べちゃうぐらい大大大、大好きっ、だーーーー‼︎‼︎」


だー、だー、だー……とこだまするはずのない陽向の声が空にこだました。