メンヘラちゃんとヤンデレくん!?

朝。
怜くんからのメッセージで目が覚めた。
『おはよう』
『ちゃんと寝れた?』
それだけで、胸が少し軽くなる。
『うん』
『怜くんは?』
送信してから、既読がつくまで画面を見つめ続けた。
数秒なのに、長く感じる。
既読。
『依音が夢に出てきた』
その一文に、思わず笑ってしまう。
――私も。
学校へ行く道、怜くんを探してしまう。
見つけた瞬間、心臓が跳ねた。
「依音」
名前を呼ばれるだけで、安心する自分がいる。
「今日、一緒に帰れるよね?」
確認するみたいな言い方。
「うん」
即答してしまってから、
他の予定があったことを思い出す。
でも、どうでもよくなった。
放課後。
少しだけ、怜くんが他のクラスの友達と話していた。
昨日よりは、胸は痛くならなかった。
でも、落ち着かない。
そばに行くと、怜くんはすぐ気づいてくれた。
「待たせた?」
「……ううん」
それだけで、もう満足だった。
帰り道、手を繋ぐ。
当たり前みたいに、指が絡まる。
「ねえ」
依音が小さく言う。
「怜くんがいない時間、すごく不安になる」
自分でも驚くほど、素直な言葉だった。
怜くんは立ち止まって、こちらを見る。
「それ、俺のせい?」
責める口調じゃない。
「ううん……でも」
言葉に詰まる。
「怜くんの声聞くと、落ち着くから」
少しの沈黙。
それから、怜くんは依音の手を強く握った。
「それなら」
優しい声。
「不安になる前に、俺のところに来ればいい」
「我慢しなくていい」
視線が絡む。
「依音は、俺に甘えてればいいんだよ」
胸が、じんわり温かくなる。
「……迷惑じゃない?」
小さく聞くと、怜くんは微笑んだ。
「迷惑なわけない」
「依音が必要としてくれるの、嬉しい」
その言葉に、胸の奥が満たされていく。
――これが、普通じゃなくても。
――これが、少し歪んでても。
怜くんがいるなら、いい。
家に帰って、布団に入っても、
スマホを手放せなかった。
『もう寝る?』
『おやすみ言ってからにして』
返事が来るまで、眠れない。
画面が光る。
『おやすみ』
『明日も一緒にいよう』
その言葉を読んで、やっと目を閉じた。
不安は、消えない。
でも。
怜くんがいれば、
それでいいと思ってしまう自分がいた。
――少しずつ、
「一緒じゃない時間」が、
耐えられなくなっていくのだった。