メンヘラちゃんとヤンデレくん!?

放課後。
怜くんが、誰かと話しているのを見た。
それだけで、胸の奥が冷たくなる。
相手は同じクラスの女子。
笑ってる。
怜くんも、少しだけ口元を緩めていた。
――なに、あれ。
足が動かなくて、柱の影から見てしまう。
たった数分。
それだけなのに、心がざわざわして、息が苦しい。
やっと離れたのを見て、私は怜くんの方へ歩いた。
「……誰だったの?」
できるだけ、普通の声。
「クラスの人だよ。プリントのこと聞かれただけ」
即答。
でも、それが逆に不安になる。
「……楽しかった?」
沈黙。
ほんの一瞬。
その一瞬が、耐えられない。
「依音」
名前を呼ばれて、どきっとする。
「どうしたの?」
優しい声。
でも、答えはくれない。
「私、嫌だった」
思っていたより、声が強くなった。
「怜くんが、他の人と笑うの」
自分でも驚くほど、素直だった。
「私だけって、言ったのに」
言ってない。
そんな約束、してない。
……それでも。
「依音」
怜くんは、困ったように笑った。
「考えすぎだよ」
その言葉で、何かが切れた。
「考えすぎじゃない!」
思わず声を荒げてしまって、周りの視線が刺さる。
でも、止まらない。
「私、怜くんのことしか見てないのに」
「怜くんは、違うの?」
震える声で問い詰める。
胸が苦しくて、泣きそうで。
「私だけじゃ、足りない?」
怜くんの表情が、すっと変わった。
周りを一瞬見て、私の手首を掴む。
「来て」
人気のない場所まで引っ張られて、壁際に追い詰められる。
「……不安にさせたなら、ごめん」
低い声。
「でも」
指が、私の顎に触れる。
「そんな顔、他の人に見せないで」
目が合う。
「依音は、俺のだから」
その一言で、頭が真っ白になった。
「……ほんとに?」
涙が溢れて、止まらない。
「私だけ?」
すがるように聞くと、怜くんは私の額に額を寄せた。
「当たり前でしょ」
逃げ場のない距離。
「だから、疑わなくていい」
「不安になったら、俺のとこ来な」
背中を抱き寄せられる。
「独占欲、悪いことじゃないよ」
耳元で囁かれる。
「それだけ、好きってことなんだから」
――肯定された。
この気持ちも、
この醜さも。
「……じゃあ」
小さく、でも確かに言う。
「怜くんも、他の人と話さないで」
自分でも、重いってわかってる。
それでも。
怜くんは、少しだけ笑って答えた。
「わかった」
あまりにも、あっさり。
「依音が壊れるくらいなら、その方がいい」
その言葉に、胸がじん、と熱くなる。
怖いのに。
嬉しい。
私のメンヘラは、
ちゃんと居場所を見つけてしまった。
――もう、戻れない。